午前7時起床。
いつもより少し早起きして、ホテルをチェックアウト。
朝食を食べに出かける。
向かうはもちろん、町で唯一のレストラン「Kate’s Cafe」。
パンケーキと目玉焼きとベーコンの「Breakfast Special」を頼む。
昨日と同じネイティブアメリカンのウェイトレスがほぼ満席の店内を忙しそうに動き回っている。
僕はてっきり彼女の一家が店を切り盛りしていると思い込んでいたのだが、そうではなかった。
奥から女主人らしき白人が出て来て「あんた、何もたもたやってんのさ。そんなことだとクリスマスのボーナスはなしにするよ!」とウェイトレスを叱りつけたのだ。
「イヤです」
彼女は消え入りそうな声で答えると、テーブルの上をきれいに片づけた。
しばらく経って彼女が僕らのテーブルにコーヒーのお代わりを注ぎに来たとき、僕は思い切って彼女に話しかけた。
昨晩からどうしても聞きたくて仕方がなかった質問があったのだ。
「この町に住んでいる人たちは主にどんな仕事をしているんですか?」
彼女の答えは意外だった。
「いろんな仕事があるわ。お店で働いたり、ガソリンスタンドで働いたり…」
しかし、どう考えてもこの町にそんなにたくさんの店があるはずがない。
僕が怪訝そうな顔をしていたのだろう、彼女は慌てて付け加えた。
「この保留地の外の町へ働きに行く人もいるわ。知人がいないと実際に仕事を見つけるのは難しいんだけど…」
「じゃあ、この町で働けるあなたはラッキーなんですね」
僕の言葉に彼女はYesともNoとも答えなかった。
店を出て出発。
今日最初の目的地はGrand Canyonの南壁(South Rim)だ。
昨日行った北壁(North Rim)に比べると観光地としてもポピュラーだという。
国道U.S.89号線から州道64号線は例によって一本道の気持ちいいドライブ。
ガソリンスタンドで買ったRicky MartinがBGMだ。
2時間ほどで到着。
南壁は北壁と違ってビューポイントがいくつもあるため、駐車場に車を停めて無料のシャトルバスで巡回するようになっている。
確かに南壁の方がスケールが大きく、ポイントによって微妙に表情を変える峡谷は見事としか言いようがない。
だけど、僕はどちらかと言えば北壁の方が好きだ。
昨日見かけた老夫婦のようにロッジのロビーに腰を下ろし、一日中のんびりと峡谷を眺める。
バスに乗って忙しく移動するよりそちらの方が豊かなような気がするのだ。
バスを降りて見上げた空がとてもきれいだった。
次の目的地はMonument Valley。
今朝来た道をそのまま引き返すことになる。
途中、Cameronという、これまたネイティブアメリカンの町で昼食。
僕は「ビーフ・パティー・プレート」というメニューを頼んだのだけれど、出てきたのはコレ。
チリピーンズの上にレタス、チーズ、トマトが乗った、ビーフとは似ても似つかない代物だ。
きっと僕の発音が悪かったのだろうと黙っていただいたけれど…。
国道U.S.89号から160号に乗り換えて北東へ。
Kayentaという町で国道U.S.163号線を左に曲がる。
20マイルほど走ると、右側に異様な物体が並んでいるのが見えてきた。
そこがMonument Valleyだ。
時刻は午後5時30分をまわり、国立公園の入園料を徴収するゲートには誰もいない。
土産物屋も閉店しており、観光客の姿も少ない。
園内に入る門も半分閉まっている。
もしかしたら閉園時間を過ぎているから入ってはいけないんじゃないだろうか…。
その時、僕らの目の前を一台の車が通り過ぎ、園内に入っていった。
3人で目配せをした瞬間、僕はアクセルを踏んでいた。
「よし、行こう!」
園内は舗装されていない道路で岩柱を巡ることができるようになっている。
日はまだ高いが、雲が厚く空をおおい、薄暗い。
コースを半分ほど回ったところに、小さな小屋が建ち、洗濯物が干されている一角があった。
近づくと、子供たちが石蹴りをして遊んでいる。
入口の標示にはこう書かれてあった。
「No Picture Taking」
そこはネイティブアメリカンの集落だった。
国立公園のど真ん中。
僕らにとって観光地である以前に、ここは彼らにとってなくてはならない生活の場なのだ。
なんだか申し訳ない気がして、車を静かに走らせた。
コース一周がほとんど終わりかけた頃、数台の車が停まっているポイントがあった。
十人以上の人がカメラを構え、同じ方角を見ている。
どうやらまもなく雲の切れ間から顔を出すであろう夕陽を待っているらしい。
ここまでほとんど他の車とすれ違わなくて心細く思っていた僕らは、閉園時間破りの仲間がたくさんいることに安心して、同じポイントでしばらく待ってみることにした。
30分ほどが経過しただろうか。
西の空の雲を突き抜けて、待望の太陽がまばゆい光を照射し始めた。
見る見るうちに岩柱の影が長く伸び、それは神々しいオレンジ色に輝く。
人々の間にどよめきが広がり、歓声が上がる。
とてもこの世のものとは思えない神秘的な光景が目の前に現れたのだ。
僕は言葉を失った。
そして、太陽が再びその姿を地平線に隠すまで、呆然と立ちつくしたのだった。
《今日の出費》
朝食(Breakfast Special) $4.50
昼食(ビーフ・バティー・プレート?) $8.89
ガソリン代 $19.23/3=$6.41
ホテル代 $54.00/3=$18.00
夕食(ハンバーグステーキ) $9.48