午前10時起床。
のんびりくつろいだHot Springsを出発だ。
目指すはエルビス・プレスリーの故郷Memphis。
フリーウェイI-40を東へひた走る!


景色は相変わらずの農村地帯。
いつもと違うのは大型トラックが猛スピードで僕らの車を追い越していくことだ。

そういえば、Albuquerqueに向かう途中で大型トラックをよく見たのも確かI-40だった。
ということは、やはりこの路線は長距離トラックの幹線道路なのだろう。
途中のドライブインにもトラックがたくさん停まり、いかついドライバーたちが集まっていた。

走り続けること3時間半。
「Memphis」の標示が現れた。

ルイジアナ州からミシシッピー州に入るときに越えたミシシッピー川を再び越え、ついにテネシー州にやって来たのだ。

このところ宿泊費がかさんでいたので、今日はできるだけ安いモーテルに泊まりたい。
そんな僕らが割引クーポンで見つけたのがここ。

なんと1泊$26.95+taxという破格のモーテルだ。
周辺の治安は良くもないが悪くもない、という感じ。
部屋を見せてもらうと、確かにボロいが寝るだけなら支障はないだろう。
よし、ここで決めよう!

とはいえ、完全に信用しちゃいけないぞ、という声がどこからか聞こえてくる。
クレジットカードを悪用されないよう宿泊費を現金で支払い、ノートパソコンをはじめとした貴重品は部屋に置かずに出かけることにした。

まず、やって来たのはミシシッピー川沿岸にある観光案内所。
ドアを開けるといきなりエルビス・プレスリーとB.B.キングの銅像がお出迎えだ。

看板には「Home of the Blues」「Birthplace of Rock’n Roll」と誇らしげに書かれている。
なるほど、「ブルースの故郷」「ロックンロール生誕の地」か。
そういえばずいぶん前にNHKの子供向け偉人伝番組でエルビス・プレスリーの回を担当したことがある。
その時はロケに同行せず台本を書いただけだったが、その主たる舞台となった町にやって来たわけだ。

市内の地図やパンフレットを入手してダウンタウンを歩く。

近代的な高層ビルとレンガ作りの古い建物が共存する不思議な街並み。
それにしても違和感があるのは、平日の夕方5時過ぎだというのに歩いている人をほとんど見かけないことだ。
オフィスビルにも空室が目立ち、思わず“ゴーストタウン”という言葉が脳裏をかすめる。
アメリカの大都市ではダウンタウンの空洞化が進み、中流以上の人は郊外に住むという話をよく聞くが、ここMemphisもその例外ではないのかもしれない。

さらに歩いて“ブルース発祥の地”Beal Streetへ。

New Orleansの“ジャズ発祥の地”が「バーボンストリート」なら、こちらは綴りは違うが「ビールストリート」。
面白い偶然だ。

3ブロックほどの通りにはライヴハウスや楽器店などが並び、ブルースが流れてくる。
バーボンストリートのように最新ポップスに侵されていず、確かにそれなりの雰囲気はあるのだが、熱気に満ちあふれているという感じではない。
歩いているのはカメラ片手の観光客ばかり。
週末や夜になればまた変わるのかもしれないが、どうしても“古き良き”という印象は拭いきれない。

モーテルへの帰り道、プレスリーをはじめ数々のアーティストがレコーディングをしたという、伝説の「Sun Studio」に立ち寄る。

どこかで見覚えがあるなぁ、と思ったら、例の偉人伝番組のVTRに出てきたところじゃないか。
そうか、ディレクターはここでロケをしたんだ、とヘンな感動をしてしまった。

篠原さんとMikioさんは買い物に出かけ、僕はモーテルに戻った。
日記を書こうとノートパソコンのセッティングをしていると、作業服を着た男が部屋を訪ねてきた。
「この部屋のテレビは壊れてるから交換するよ」
そう言われれば断るわけにもいかず、鍵を開ける。
男はテレビのケーブルを抜き差ししながら、僕のパソコンをジロジロ見ている。
な~んか、ヤな雰囲気……。
彼はなにやら聞き取りにくい英語でブツブツ言い、帰っていった。

その後、フロントから電話。
「その部屋は壊れているから別の部屋に移って欲しい。鍵を渡すからフロントまで来てくれ」と。
買い物に行っている2人がいない間に部屋を移ってしまったら2人はとまどってしまうだろう。
それに、さっきの男のこともあるから、たとえ短時間でも荷物をおいたまま部屋を空けたくはない。
「友人が戻ってきたらすぐ行くからそれまで待ってくれ」と返事する。

またしばらくすると、警備員の制服を着た男が部屋を訪ねてきた。
「この部屋にチェックインした時のレシートを持っているか?」
どうやら部屋番号を確認したいらしいが、手続きをしたのは篠原さんなので僕はレシートを持っていない。
そう答えると男は「とにかくフロントまで来てくれ」の一点張り。
先ほどと同じように「後で必ず行くから」とかろうじて追い返す。

また10分くらいすると、今度はフロントの係員が訪ねてきて同じことをくり返す。
単に親切で言ってくれているような気もするが、なんとかして僕を部屋から出そうとしているようにも思える。
安モーテルだけに何が起きても不思議はない。
用心するに越したことはないだろう。
「友人が帰ってきたらすぐ行く」と答えてお引き取り願う。

それから2人が戻って来るまでの間の緊張感ったらなかった。
次にやって来るのが拳銃を持った男だったら……などとつい最悪のケースを想像してしまうのだ。
ノートパソコンと数十ドルのために殺人を犯す、なんてことは日本ではまずあり得ないだろうが、なにしろここはアメリカだ。
しかも、部屋の中を堂々とゴキブリが歩いている安モーテル。
他人を信用できないというのがこんなに心細いことだとは思わなかった。

30分後、2人が帰ってきてフロントに行くと、先ほどの係員がニコニコしながら新しい部屋のキーを渡してくれた。
その笑顔を見ると、彼を疑ってしまった自分に腹が立つ。
「手間をかけてしまって申し訳ない」と謝って新しい部屋に荷物を運び込む。

これで一安心かと思いきや、新しい部屋のチェーンロックが壊れているではないか。

もしかしたらこれは罠なのか!?
まさかね……。

《今日の出費》
チップ $1.00
ホテル代(2泊分) $102.30
昼食(パンケーキ&コーヒー) $8.45
駐車場代 $3.00/3=$1.00
夕食(BLT&アイスティー) $12.42

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