午前9時起床。
今日の目的地Atlantaでは見たいところが多いので、いつもより少しだけ早起きしてモーテルをチェックアウト。
荷物を車に積み込んで、さっそく出発だ。


朝食を食べようと近くのレストランに入る。

「お客様、何名様ですか?」「スリー」
そう答えた瞬間に店員がクスクス笑いだした。
何が起きているのか分からず呆然としている僕らに店員は「あなたの発音、おかしいわ」。
留学生を1年以上やってるというのに「スリー」の発音で笑われるとは思わなかった。

僕らが地図を持っていたからだろう、ウェイターが興味深げに聞いてきた。
「どこへ行くんですか?」
「アトランタへ」
すると、店員の頭上に「?」が10個くらい並んだ。
「だ・か・ら、アトランタまで行くんだ」
何度も言い直してやっと彼の頭上に大きな「!」が浮かぶ。
「Oh, I see. アッランタね」

おそらくこの辺には外国人がほとんどいないから外国人の英語に慣れていないのだろう。
店に入った瞬間に物珍しげな視線を感じたのもきっとそのためだ。
ショックを受けつつも、これをきっかけに会話が弾む。

エプロンに「Reiko」という文字が書かれていたので「これ、キミの名前?」と尋ねると、「Yes. I am 『リーコー』」と答える。
「同じ綴りで『レイコ』っていうと日本では女の子の名前になるんだよ」と教えると「Really?」と面白そうにうなずいていた。

彼が厨房で「面白い日本人が来てるぜ」とでも言いふらしたのだろう、テーブル担当以外の店員が入れ替わり立ち替わり僕らの席にやって来て話しかけてくる。
最後にはマネージャーらしき女性まで。
「Have a nice trip!」
何人もの店員にそう言われ、僕らはいい気分で店を後にしたのだった。

フリーウェイI-20を東に120マイルほど走ってジョージア州に突入。
ここからEastern Standerd Timeになるので時計を1時間進めなければならない。
いつものように観光案内所に立ち寄って地図と資料を入手。
もちろん、Exit GuideMr. Interstateといったモーテル割引クーポンも忘れちゃいけない。

今日はどこのモーテルも週末料金だからなおさらだ。

さらに25マイルほど走ってアトランタのダウンタウンに到着。

びっくりしたのは町を歩いている人の90%以上が黒人であること。
確かにダラスを過ぎたあたりから黒人が多くなってきてはいたのだが、その割合がここに来て急上昇だ。
しかも、たまに見かける白人は、その多くが観光客に見える。
アメリカ南部を実感する瞬間だ。

僕らがまず向かったのはCNN。

ちょうどタイミング良く、スタジオツアーに参加することができた。

天気図画面とキャスターを合成するクロマキーという技術や、ニュースキャスターがカメラ目線で原稿を読むことができるプロンプターの実演は仕事上何度も見たことがあったので珍しくなかったのだが、興味深かったのはニューススタジオの説明だ。
「このフロアの真ん中の机はプロデューサー。そして、あちらに座っているのがライターです」
ガイドが指さした先は窓から吹き抜けが一望できる、そのフロアの特等席だった。

各デスクにはオンエアが放送されている小型テレビとパソコン一式。
「あそこで書かれた原稿を直接スタジオのプロンプターに送信することができるのです」
う~む、完全ペーパーレスのフルデジタル原稿か。
スタジオの床に這いつくばって原稿を書きなぐったこともある僕とはずいぶん違うじゃないか(笑)。

もうひとつ気になっていたのはCNN.comがどうやって作られているのかということ。

「CNNのあらゆるセクションに集められた映像と原稿は全てこのCNN interactiveのオフィスに送られ、Web用に加工されます」
窓から覗いてみた限り、それほど大きなオフィスではない。
机の数はせいぜい20~30人分といったところだろうか。
たったそれだけの人数であの膨大なサイトが運営できるのは、やはり元の情報がデジタル化されているからなのだろう。
日本のテレビ局も同じようなウェブサイトを立ち上げてくれれば旅先からでもニュースがチェックできるのになぁ。

早起きしたおかげで時間はまだ午後4時過ぎ。
僕らは同じダウンタウンにあるWorld of Coca-Colaへと向かった。
Atlantaで起業し世界企業に成長した、アメリカの象徴とも言うべきコカコーラの博物館だ。

以前に訪れたDr. Pepper博物館とはさすがに規模が違う。
開業当時のボトリングマシンから世界で放送されているコカコーラのCMまで展示も華やかだ。
一番違うのはDr. Pepper博物館では有料だったドリンクがここでは無料だということ。

あっ、その分は入場料に含まれているのか(笑)。

全ての見学コースを回り飲み放題のコーラを飲んでいたら、ふと思い出したことがある。
現Apple Computer暫定CEOのスティーブジョブズがかつてペプシコーラのジョン・スカリーをヘッドハンティングするときに使ったという決めゼリフだ。
「あなたは残りの人生も砂糖水を売って暮らしたいのか。我々と一緒に世界を変えるチャンスを手にしたくないのか」

そう、極端に言えばコカコーラだってただの砂糖水だ。
だが、僕らは「Coca-Cola」というロゴにそれ以上の何かを感じている。
「スカッとさわやか」であったり「スポーティーな飲み物」であったり、「国際的な企業」であったり「アメリカの象徴」であったり……。

こうしたイメージはCoca-Cola社の卓越した宣伝戦略によるものだろう。
この博物館の展示の中心的役割を果たしている世界のCMはどれも優秀なクリエイターの手になるものであることが一目瞭然だし、オリンピックをはじめとした国際的スポーツイベントでCoca-Colaのロゴを見ないことはない。

つまり、Coca-Cola社は世界に冠たるイメージ企業ではないのか。
Dr. Pepperとの違いは、単に宣伝の違いだけではないのか。
世が世なら、僕はDr. Pepperを飲んで「スカッとさわやか」と感じていたかもしれないなぁ。
そんなことを考えながら今夜のモーテルにチェックインしたのだった。

《今日の出費》
チップ $1.00
モーテル代 $34.35/2=$17.18
昼食(アップルパンケーキ&コーヒー) $8.67
駐車場代 $11.00/3=$3.67
夕食(中華&甘いアイスティー) $5.65
アイスモカ $2.73