事件はリーディングのクラスで起こった(笑)。

テキストの文章を一通り読み、その中に出てきたボキャブラリーを先生が説明しているときのことだ。 「siren」(辞書によれば「魅惑的な美人、(特に男をとりこにする)妖婦」とある)という単語について先生が「あなたがsirenだと思う実在の人物は誰?」という質問をクラスに投げかけたのだ。

「マリリン・モンロー!」「マドンナ!」という分かりやすい答えが飛び交う中、ひねくれ者の僕はこう答えた。

「モニカ・ルインスキー!」

すると、先生は一瞬苦々しい顔をした後、こう言った「I don’t think so」。

そりゃ、僕だって彼女が「魅惑的」だとは思わないさ(笑)。

でも、一国の大統領が誘惑されたんだ。

十分「妖婦」と呼ばれる資格はあるんじゃないの?

第一、「魅惑的な美人」かどうかなんていうのは主観的な価値基準だ。

ってなことを僕がつたない英語で説明し始めたとたん、先生は「No. Stop!」と冷たく僕の発言を遮った。

おいおい、そりゃないよ。

マリリン・モンローやマドンナについてのフリートークはさんざんやったくせに。

僕にとっては「siren」という単語の意味を覚えるより、自分の意見をしっかり英語で相手に伝える方が何十倍も重要なんだ。

モニカ・ルインスキーが明らかに「siren」の定義から外れているのなら、やりとりの中でそう説明してくれればいい。

そのディスカッションが授業の主旨から大きく外れているとは思わないのに。

新顔の僕が授業の進め方を理解していないだけかと思っていたら、どうやらそれは違ったようだ。

「nocturnal」(辞書によれば「【動】 夜間活動する, 夜行性の」とある)の説明のとき、先生が「ニューヨークはnocturnal cityと呼ばれているけどそれはどうしてだと思う?」と聞いた。

「夜中でも店が開いているから」という当たり前の答えに続いて、1人の男性(日本人)が答えた。

「交通機関が深夜でも動いているから」

間接的な要因といえばそうかもしれないけれど、十分質問の答えにはなっている、と僕は思った。

が、先生は例によって苦々しい表情だ。

その生徒が「Because ~」と説明し始めた瞬間、先生は僕のときと同じように彼の発言を遮ったのだ。

もちろん彼は不満そうな顔をしている。

先週の授業のとき、僕はこの先生が「他文化についての理解に欠けている」と感じたのだが、そんな高尚なものではない。

単に自分が想定している以外の答えが生徒から出てくるのを認めないだけなのだ。

そういえば日本の中学・高校時代にもときどきそういう先生がいたっけ。

かつてCSUNで経験したようなフリーディスカッションに参加できる力を身につけたいと思っている僕にとって、想定問答集をなぞるだけの授業はほとんど意味がない。

他の先生の授業では有意義なフリートークが交わされていることを考えると、 「語学学校だから」というより、先生個人の資質の問題のように思える。

授業の後相談に行くと、ディレクターは「あなたもダメですか。○○先生とそりが合わないという生徒は時々いるんですよね」。

そりが合うとか合わないとかいう問題じゃないと思うんだけどなぁ。

解決策としては○○先生がいない午後のクラスに移ること。

残念ながらadvancedクラスはないのだけれど、今の僕にはディスカッションの「内容」よりもディスカッションすること自体が大切だ、ということは理解してもらい、手続きを進めてもらうことにした。

実際には10月の一時帰国後から新しいクラスに参加することになる。

ホッと一安心したところでランチに誘われていたMさんのアパートへ。

ひょんなことから宗教の話になって、授業中に言いたいことが言えなかった反動か、3時間以上もディスカッション。

「パーティーに政治と宗教の話は御法度」というのは収拾がつかなくなるからだっていうことなんだな(笑)。