午前9時起床で学校へ。
Computer for New Mediaの授業だ。

時間ちょうどにGotthoffer教授が教室に入ってきた。
が、いつもと違って暗い表情をしている。
学生たちの方に近づいてきてとつとつと語りだした。
「キミたちには申し訳ないけれど、私は今学期いっぱいでCSUNから去ることになった…」

あ然とする学生たちに教授はいきさつを説明する。
今後の学部の方向性について学部長や他の教授たちと意見が合わなかったのが理由だという。
「マルチメディアの分野は次々に新しい技術が生まれている。当然、教える内容や方法もそれに合わせてアップデートすべきだと私は主張したんだけれど、それが分かってもらえなかったんだ」

すでに発表されている秋学期のカタログには当然教授の名前も記載されている。
このクラスの学生たちはほぼ全員がマルチメディア専攻だから、教授の授業を楽しみにしていたはずだ。
「じゃあ、私が取ろうと思っていたクラスはどうなるんですか!」
「学部長に抗議しにいこう!」
「どうしたら翻意してもらえますか?」
まるで青春ドラマの一場面のように学生たちが熱くなっている。
誰もがGotthoffer教授の優秀さを認めているのだ。

マルチメディアをテクノロジーとしてではなく「論」として語れる人材は少ない。
教授がいなくなったら彼が担当するはずだったクラスは全てキャンセルになる可能性もある。
マルチメディア専攻の学生にとっては自分の進路に関わる一大事なのだ。

「心から残念だが、事態はもう変わらないんだよ」
そう言う教授の目は潤んでいる。
「当面はUSCでのPh.D.修了に努力しながら他の学校で教えるチャンスを探すつもりだ。聞きたいことがあったらいつでも個人的に連絡してくれ。喜んで教えるよ」

渡米から1年、公私ともに最もお世話になったGotthoffer教授だけに僕のショックも大きい。
それにしても個人主義の国アメリカでさえ「出る杭は打たれる」ということがあるんだなぁ。

「さあ、授業を始めよう!」
いつもより張りのある教授の声が教室に響き渡った。