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2005年03月03日

●「天使と悪魔」

「天使と悪魔」
天使と悪魔(上)天使と悪魔(下)

ダン・ブラウンが「ダ・ヴィンチ・コード」の前に書いた小説。
僕には「ダ・ヴィンチ・コード」よりこちらの方が面白く、あっという間に読破してしまった。

どこが面白かったかというと、まず第一に「宗教と科学の対立」というテーマ設定。
冠婚葬祭くらいでしか宗教と接しない日本人にとってはピンと来にくいかもしれないけれど、キリスト教の影響の大きいアメリカの一部地域では「神の創世記に反する」という理由で教科書で進化論を教えないという話を聞けば、なんとなく両者の対立構造が想像できるかもしれない。
本作ではキリスト教の総本山・バチカンと現代科学の最先端・セルン(欧州原子核研究機構)を対置して、両者の本質をあぶり出している。

第二に「秘密結社による陰謀」というミステリー構造。
「ダ・ヴィンチ・コード」にも登場する秘密結社だが、今回はキリスト教と対峙する科学者による歴史的な組織「イルミナティ」や「フリーメイソン」が出てくる。
フリーメイソンといえばトンデモ本の常連だが、本作ではそこらの陰謀史観本よりずっとリアルに描かれ、魅力的なミステリーの根幹をなしている。

第三にローマとバチカンを舞台にした観光的な要素。
本書の冒頭に「ローマの美術品、墓所、地下道、建築物に関する記述は、その位置関係の詳細も含めて、すべて事実に基づくものである。これらは今日でも目にすることができる」という注記がある。
こうした「事実」を舞台に展開される物語はリアルさを付与されると同時に異国情緒をかき立てる。
僕が世界一周の旅で見て回った観光名所の数々もストーリーの重要な舞台になっているのだけれど、きっとこの小説を読んで「事実」を確認しにローマに行きたくなる人も多いに違いない。

最後にエンタテイメントの王道的構成。
タイムリミットの迫る中、葛藤をどんどん高めていってラストのカタルシスになだれ込むという定番の構成は、分かっちゃいるけど引き込まれる。
「ダ・ヴィンチ・コード」と同じく、画になるクライマックスも用意されていて、映画化にもってこいだ。

この本、欧米でもヒットしているらしいけど、保守的なクリスチャンがどんな反応してるのか興味あるなぁ。

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