●「デセプション・ポイント」
「ダ・ヴィンチ・コード」がベストセラーになっているダン・ブラウンの小説。
日本での出版は「ダ・ヴィンチ・コード」より後だけれど、原作は「天使と悪魔」(2000年)と「ダ・ヴィンチ・コード」(2003年)の間となる2001年の出版。
今回は宗教象徴学者ラングドンのシリーズではなく、NASAを中心としたアメリカ政府機関と大統領選挙をからめたミステリーだ。
スケールの大きい舞台設定とテンポのいいストーリー展開も他の2作と相通ずるものがあるが、最大の共通点は実在の組織や科学技術を物語のベースに置いていること。
今回も本編にはいる前に「デルタ・フォース、国際偵察局(NRO)、宇宙フロンティア財団(SFF)は現存する組織である。この小説で描かれる科学技術はすべて事実に基づいている」という著者注記がある。
この一文が作品のエンタテイメント性をいかに高めていることか。
映画などでもときどき「事実に基づいている」という作品があるけれど、まったく同じストーリーが事実に基づいていない場合より心に訴えかけるパワーが明らかに大きいと思う。
リアルの持つ訴求力をフィクションに取り込む手法はちょっと勉強したいところだ。
ちなみにこの3作で僕が一番よかったのは「天使と悪魔」かなぁ、やっぱり。