7月4日(土)
今日はアメリカ独立記念日。そう、“インディペンデンスデイ”だ。
テレビではスーパー、家具屋、中古車屋の「独立記念日セール」のコマーシャルが流れ、星条旗がはためきっぱなし。
ニュースでもCM前のキューカットのたびに各地で行われるイベントの告知が流され、文字通りお祭り気分だ。
今日も宿題のエッセイと格闘している一日本人留学生の僕には全く関係ないと思っていたのだが、「友だちのアパートから花火が見られるんですよ。来ませんか?」という篠原さんの誘いに乗って出かけることにした。
篠原さんの元ホストブラザー(つまり、ルームメイト)であるKenのアパートは花火大会が行われるMarina del Reyにほど近く、去年もそこにみんなで集まって花火を見たのだという。
午後9時、遠くで聞こえる花火の音に誘われて屋上へ出てみると、そこにはビールを片手に盛り上がっているアパートの住人たちの姿があった。
聞くところによると、アメリカでは「銃声と間違われる」というとんでもない理由で花火が禁止されており、1年で唯一、独立記念日の今日だけそれが解除されるのだそうだ。
30分ほど続いた花火は隅田川花火大会などに比べるとショボいとしか言えないレベルなのだが、それでもやっぱり花火はいいもんだ。
驚いたのは僕らの隣で花火を見ていた人たちが突然こぶしを振り上げて「星条旗よ永遠なれ」を歌い始めたこと。
ごく自然に、そして楽しそうに…。
ちょっとした反発も覚えたが、同時に羨ましいなとも思った。
日本で「君が代」を楽しそうに歌う人なんて見たことがないから…。
今日、Kenの家に集まったのはほとんどがSanta Monica Collegeへの留学生。
年齢は20代前半が多い。
みんなの話を聞いていると、カラオケに行ったとか踊りに行ったとかずいぶん楽しそうだ。
おかしいなぁ。僕は毎日宿題をやるだけで精一杯なのに(苦笑)。
7月5日(日)
というわけで、今日も勉強(笑)。
フーバー教授に添削されたエッセイをリライトの上タイプ打ちして明日提出しなければならないのだ。
もちろん、その他にテキストの予習もある。
日本語なら10分で書ける内容なのに英語だと軽く3時間はかかってしまう。
その上、言いたいことを英語的な表現にすることの難しさといったら欲求不満この上ない。
こんなんで秋からの授業についていけるのだろうか?
そして、いつになったらスラスラと英語の論文が書けるようになるのだろうか?
はぁ、道ははてしなく遠いなぁ。
と、ここで大事件発生!
なんと我が部屋でネズミを発見!(写真撮ってる場合かって!?)

キッチンでガタゴト音がするなぁ、と思って捨てたばかりのゴミ箱を覗いてみると、なんと体長10センチくらいのかわいいネズミ君を発見してしまった。
必死でジャンプしてゴミ箱から脱出しようとしている姿がなんとも愛くるしいではないか。
とは言ってもこのままにしておくわけにもいかず、ゴミ箱ごと部屋の外に連れ出して逃がしてやる。
恩知らずなネズミ君はわき目もふらず、一目散にトコトコと走って逃げていきましたとさ。
7月6日(月)
ESLも3週間目に突入。
やっと慣れてきたのか、勉強のペースがつかめるようになってきた。
まずは先週のエッセイが返却される。
なんと75点! すごいぞ!
例によって赤ペンで書き込みがされているのだが、「意味をなしてない」とか「ぎこちない表現」という大きな指摘は1回目に比べると激減。
時制や主語述語の一致といった細かいミスが多い。
やはり限られた時間内にたくさん書こうとするとどうしてもこうなってしまう。
それでも自分としては満足のいく結果だ。
そしてジャーナルも返却される。
こちらは前回に続いてなんと20点満点!
文法やスペルのミスを見逃してもらえるジャーナルならではの結果だ。
とにかく分量を多く書けばいいのだから。
ホッとしたのもつかの間、すぐさま今日のお題が発表される。
「映画は見る者に悪影響を与えるという説に賛成か反対か、具体的な例を挙げながら自分の意見を展開せよ」
一応12年間メディアに関わってきた僕にとって、これは得意分野。
楽勝だ。
「部分的に賛成。映画は見る者に悪影響を与えると同時に良い影響も与えるから。例えばポルノ映画の影響で性犯罪が増えるという研究があるが、しかし一方で性的衝動が発散され性犯罪の防止に役立っているという見方もある。見る者に全く影響を及ぼさない映画はない。あったとしたら意味がない。要は見る側の姿勢が重要なのだ」
…というアウトラインは30秒で思いつく。
が、得意分野だけにいいかげんなことは書きたくないと慎重に言葉を選んでいるうちに「あと3分!」という無情な声。
慌ててまとめに入ったが結局110ワードしか書けなかった。
う〜ん、失敗だ。
残りの時間はピリオド、カンマ、セミコロンなど句読点の使い方に関する文法の授業。
時々、集中力がとぎれるものの、なんとか120分の授業を乗り切った。
アパートに帰ってきて翌日の予習。
週末に頑張ったおかげでちょっと余裕があるのでじっくり進める。
夕方5時を回ったところで買い物へ。
Cigarettes Cheaperというその名の通りタバコのディスカウント店でマルボロ1カートンを$18で購入。
他の店ではだいたい$22するからちょっとお得だ。
続いてMax Foodsというディスカウントスーパーで食料品の買い出し。
ここは食パン29¢とかソーセージ2パック99¢という大安売りをする、貧乏留学生にとっては神様のような店だ。
最後に「ヤオハン」へ。
ほとんどの買い物はMax Foodsで済ませたのになぜ「ヤオハン」かというと、その理由は「日刊サン」。
日本のサンスポと特約しているこのスポーツ新聞が毎日5時半頃、日系スーパーに置かれるのだ。
貴重な情報源にもかかわらず、値段は無料。
僕の周りでもこの「日刊サン」をもらうためだけに毎日「ヤオハン」にやってくる留学生は多い。
「売ります買います」の掲示やその他日本語フリーペーパーが置かれている日系スーパーはL.A.在住日本人の情報ステーションなのだ。
帰ってきて夕食の後、引き続き勉強。
明日は授業の後、California State University, Northridgeのオリエンテーションだ。
7月7日(火)
いつものように学校へ。
無難に授業をこなした後、オリエンテーションに参加するためCalifornia State University, Northridgeに向かう。
CSUN(California State University, Northridgeのことをこちらの人は略してこう言う。読み方は「シーサン」)は僕のアパートからフリーウェイを30分ほど北に走ったところにある。
数年前にLos Angeles大地震の震源地となったノースリッジは盆地に位置しているため夏は暑いと聞いていたが、今日もギラギラの日差しに照りつけられ、黙っていても汗が噴き出してくる。
まずはStudent Development and International Programs Officeへ。
渡されたカードに住所、名前、生年月日、ソーシャルセキュリティーナンバーなど必要事項を記入する。
周りを見渡すと、留学生らしいのは僕ともう一人だけ。
結局、2人でカウンセラーの部屋に通される。
パスポートとI-20、そしてSanta Monica Collegeからのトランスファーレターをコピーして渡す。
アメリカに入国してから学校を移る僕のようなケースでは、後で新しいI-20が発行されるのだそうだ。
「Santa Monica Collegeと移民局に確認した後、新しいI-20を作るから9月15日になったらこのオフィスに取りに来てね」とカウンセラーのおばちゃんは優しい。
続いては科目登録の説明。
CSUNではTTR(Touch Tone Registration)という電話による科目登録を採用しているのだが、それに参加するための暗証番号が書かれた書類を受け取る。
「TTRなら自宅にいながら科目登録ができるから早くて簡単よ」と彼女は笑うのだが、英語の聞き取りがあやしい僕の場合、簡単どころか不安が残る。
書類によれば僕の登録日は7月31日。
ただし、その前に登録料と授業料を払っておかなければ使えないそうだ。
次に健康保険の説明。
「日本で申し込んだ海外旅行保険が10月まで残っている」と言うと、「科目登録の段階はそれでOKよ。ただし、保険が切れる前に延長するか新しい保険を申し込んでね。大学が用意している保険もあるから」。
思ったよりフレキシブルなんだなぁ。
予防接種についても意外に融通がきくようで、証明書は来年春の科目登録までに用意すればいいという。
ちなみに受けなければならないのはハシカと風疹の予防接種。
どこか母子手帳を英訳してくれるクリニックを見つけなければ。
と、ここでふと彼女の英語をほとんど理解できている自分に気づく。
渡米から2ヶ月で僕の耳が英語に慣れてきたのか、それとも留学生カウンセラーだから分かり易い英語を使ってくれているのか…。
いずれにしてもいいことだ。
「科目登録をする前に必ず学部のアカデミック・アドバイザーと話し合ってね」と言われたので、アポイントを取ろうと、その足で学部のオフィスに向かう。
受付で用件を伝えると、「45分後でいいかい?」
ラッキー! どうやら今日、時間が空いているらしい。
それまでの時間を使って授業料を支払いにStudent Financial Centerへ。
入学金と諸費用が$985、授業料が1単位あたり$246×9単位で$2214、学生証発行料が$5、駐車場代が$63、合計$3267をクレジットカードで支払う。
高額だが、これをケチるわけにはいかない。
これでTTRを使えるようになるはずだ。
隣の部屋で写真撮影をして学生証を受け取り、もう一度学部オフィスへ。
僕を迎えてくれたのはロマンスグレーで恰幅のあるアドバイザーだった。
「ミスター・スズキ、あなたがこの大学で勉強する目的は何ですか?」
いきなりど真ん中の直球だ。
それより驚いたのは「ミスター」と呼ばれたこと。
Santa Monica Collegeではカウンセラーにもフーバー教授にも常に「ヒロフ〜ミ」と呼ばれていたから面食らってしまった。
さすが大学院というべきか。
「日本で10年間放送作家として働いてきた経験を生かしてマルチメディア・エンタテイメントについて学びたい」と答えるとアドバイザー氏は「ニュースに興味はないのか?」「ジャーナリズムについてはどう考えているのか?」と何度も聞いてくる。
もちろん、ニュース番組は僕の経験の重要な部分だし、今後も関わっていきたい分野ではある。
しかし「ニュースはエンタテイメントである」という僕の持論をここで説明するだけの英語力は残念ながら、ない。
「僕が学びたいのはインタラクティブ・エンタテイメントの可能性だ」と結論だけ力説する。
後で分かったのだが、僕が入学するマスコミュニケーション大学院はRadio-TV-Film学部とジャーナリズム学部が合同運営していて、彼はジャーナリズム学部担当のアドバイザーだったのだ。
結局Radio-TV-Film学部のアドバイザーを紹介され、オフィスを訪ねる。
「アポイントを取りたい」と申し出ると秘書らしき女の人が申し訳なさそうに「ドクター・バーコウは多忙のため水曜日の11時から13時しか時間がとれないんです」と言う。
何ぃ、その時間はフーバー教授の授業じゃないか!
しつこく掛け合ったがどうにもならず、結局明日のアポイントを取る。
あぁ、1回授業を休まなければならないなぁ。
広いキャンパスをあちらこちらへ走り回った1日。
来る前はいろいろ不安もあったのだが、実際にやってみると思ったより簡単だったというのが実感だ。
やるべきことが全て終わったのは午後5時。
うっとうしいほど流れ出た汗がカサカサの塩になって身体中にへばりついていた。
7月8日(水)
午前9時起床。
朝食を食べていると、昨日行ったCalifornia State University, NorthridgeのStudent Development and International Programs Officeから電話が来た。
焦るぜ! 電話は苦手なんだってば。
何度か聞き返すと、どうやら「新しいI-20を発行するために古いI-20が必要なんです。出来るだけ早く持ってきてもらえますか?」ということらしい。
ちょうど今日、キャンパスに行く用事があるからその時に立ち寄ると返事をする。
ふぅ、朝から心臓によくないぜ。
というわけで、フーバー教授のESLを1日だけさぼってCalifornia State University, Northridgeへ。
アポイントの10分前に到着し、僕の担当アドバイザー、バーコウ教授の部屋の前で待ち伏せする。
11時5分過ぎ、背の高い女性が廊下を歩いてこちらに向かってくる。
「もしかしたら私を待っているのかしら?」
そう、彼女がドクター・バーコウだった。
部屋に入るなりマッキントッシュを起動させた教授は「よろしくね」といいながら握手を求めてくる。
うん、悪い奴じゃなさそうだ。
机の引き出しから僕のファイルを取り出して、さっそくカウンセリング開始。
僕の“条件付き”合格通知には「最初の学期にEnglish 090とRTVF(ラジオ・テレビ・フィルム学部)210と220を取らなければならない」と書かれているので、これについて質問する。
RTVF210は「テレビ・映画美学」、RTVF220は「メディアライティング概論」でいまいちピンとこないからだ。
アメリカの大学の科目名につけられている番号は100番台は1年生、200番台は2年生というようにほぼ年次に相当している。
大学院生である僕は本来なら500番台からスタートするはずなのだが、その前に2年生に相当する授業を取りなさいというわけだ。
バーコウ教授によると、初めてアメリカの大学の授業を受ける留学生がいきなり500番台を取ると、ついていけないケースが多いので慣れるためにも最初の学期は学部の授業を勧めているとのこと。
学部の授業も12単位までは卒業単位に認められるのでその点では異論はない。
問題は授業の中身だ。
ここで出願時にも提出した僕のエッセイをバーコウ教授に見せ、「マルチメディアに興味があるんだ」と主張する。
すると「あら、ごめんなさい。日本でライターをやっていたというからすっかりスクリーンライティングを勉強したいのかと思い込んでたのよ」と教授。
「それならこっちがいいかもしれないわね」と代わりに勧められたのはRTVF 361「マルチメディアのためのコンピュータ概論」。
うん、それならいいかもしれない。
「もうひとつは私の授業を取ってみない?」と勧められたのはRTVF 319「ラジオ・テレビ・映画評論」。
どうやらバーコウ教授は僕の経歴に興味を持ったようで「日本では主にどんな仕事をしていたの?」「私の友人が日本のNHKで番組を作ったんだけど知ってるかしら?」と質問責めにあう。
一方で衝撃的な事実が判明。
留学生はGREのバーバル(英語)セクションで平均点(つまり標準偏差50%)をキープしなければならない!
ガ〜ン! そんなの無理だぁ。
半年間一生懸命頑張ってやっと標準偏差9%しかとれなかったのに…。
絶望に打ちひしがれる僕にバーコウ教授が救いの手を差しのべてくれた。
「ただし、成績が平均B以上で担当教授の推薦があれば免除されるのよ」
うん、そっちの方が断然可能性が高い。
「だからね、私の授業を取るのはどうかしら?」
おいおい、それって脅迫じゃない?
結局、English 090と「マルチメディアのためのコンピュータ概論」、「ラジオ・テレビ・映画評論」の3科目を取ることにしてカウンセリング終了。
あとは7月31日に電話で科目登録をするだけだ。
ついでにStudent Development and International Programs Officeに立ち寄って古いI-20を渡す。

どうやら、電話での英語は通じていたようでホッとする。
一件落着かと思いきや、帰ってきてコースカタログを見ていたら大問題を発見!
なんと、English 090とバーコウ教授の「ラジオ・テレビ・映画評論」は同じ曜日の同じ時間ではないか!
一緒に取れるわけがない。
きちんとチェックしなかった僕も僕だが、バーコウ教授もいい加減だなぁ。
とは言ってもまた来週もフーバー教授のESLを休むわけにはいかない。
ホームページからバーコウ教授のアドレスを探し当ててメールでその事実を連絡し、アドバイスを求める。
はたしてどんな返事が返ってくるのか?
たかが科目登録なのに、そう簡単にはさせてくれないんだなぁ。
7月9日(木)
2日ぶりにESLの教室へ。
クラスメイトの話によると、僕が休んだ昨日の授業でジャーナルが1本、提出物が1つあったそうだ。
その分の点数ダウンは仕方ない。
いつものようにフーバー教授が現れて、まずは「.(ピリオド)」「?」「!」「:」「;」など句読点のクイズだ。
普段、英語の文章を書くときに僕はほとんど「コロン」「セミコロン」は使わない(というか正しい使い方を知らない)のでかなりの苦戦。
これらをうまく使いこなせるとかなりそれらしい論文になるのではないか、ということだけは分かった(笑)。
う〜ん、英語は奥が深い。
続いては週末恒例のインクラスエッセイ。
4つのトピックの中から1つを選び意見を論じよというものだ。
僕が選んだのは「親は常に正しい。親は子供のことを一番よく知っている」というお題。
必ず具体的な例を挙げて論旨をサポートせよという但し書きがついている。
これまでのお題に比べると少しだけ社会的(?)だが、僕にとってはその方が書きやすい。
もちろん(笑)、この仮説に反論を試みる。
まずは立論。
「親が子供のことを愛しているというのは確かかもしれないが、一番よく知っていて正しいとは言えない」と書き始める。
「日本の新聞記事によると、小学生の男の子が将来なりたい職業の1位はスポーツ選手だが、親が自分の子供になって欲しい職業の1位は公務員だという」「日本では16才でオートバイの免許取得が法律で認められているのに多くの親(PTA)はそれに反対し子供の権利を侵害している」というような例を挙げて立論をサポートしていく。
この「日本では…」というのは僕のお得意のパターン。
教授が日本のことを僕よりよく知っているとはとても思えないので自信を持って論拠を展開できる。
もちろんそれが普遍的な広がりを持てなければ相手を説得することなどできないのだが。
1時間20分ギリギリでなんとか書き終える。
例によって週末の宿題は山盛りだ。
アパートに帰ると留守電にメッセージが入っていた。
大阪出身のKosukeの引っ越し祝いを兼ねてたこ焼きパーティーが開催されるという。
う〜ん、L.A.まで来てたこ焼きを食せるとは思わなかった。

日本から持参した専用鉄板と鉄串を見事に操ってたこ焼きを焼くKosuke。
関西では各家庭に必ずこのたこ焼き鉄板があるという。
たこ焼きのお店が多いのは知っていたが、まさかそこまでとは…。
僕にとってたこ焼きとは縁日の屋台で食べるものでしかなかったのに。
アメリカに来て日本国内のカルチャーギャップを思い知らされるのであった(笑)。
7月10日(金)
秋からの通学に備えてそろそろ新しい物件を物色しようと篠原さんを誘ってアパート探し。
なにしろ、希望物件が見つかっても一人じゃ契約交渉もできないのだから情けない。
ノースリッジに向かうフリーウェイ405の入口に近いBrentwood、Westwood、West L.Aが候補エリアだ。
比較的治安の良いこのエリアは基本的に家賃が高いらしいのだが、なんとか$700台で見つけたい。
車でグルグル走っていると、どうやらシーズンのようで引っ越しのトラックをよく見かける。
篠原さん曰く「この辺りでこんなに『空室あり』の看板を見かけるのは珍しい」とのこと。
近くにあるUCLAの学生も学期末で動いているのかもしれない。
空室があるのはいいのだが、問題は家賃。
ちょっといい物件を見かけても「う〜ん、こんなにキレイなところは高いんじゃないかなぁ」という気持ちと、管理人さんとロクに英語が交わせないんじゃないかという消極性が相まってなかなか踏ん切りがつかない。
日本じゃ絶対そんなことはないのに何と情けないことよ(悲)。
見かねた篠原さんが「不動産屋さんに行けば物件の住所と家賃、条件などを書いたリストを週2回、1ヶ月間もらえますよ。手数料が$50かかりますけどね」と教えてくれる。
そのリストがあれば前もって家賃が分かるし、自分で候補を絞ってから交渉できる。
確かに$50は痛いが、背に腹は代えられない…。
「そうしようかなぁ…」と思ったときにはもう夕方の5時を回っており不動産屋さんは閉まっていた。
篠原さん、半日も引っ張り回してしまい、すんませんでした。
7月11日(土)
午前10時に起きて朝食の後、勉強。
残りの宿題を片づけた後、録画しておいたドラマのビデオを見てリスニングの特訓を始める。
こちらのテレビにはクローズドキャプションという字幕の機能が付いているので、それを一生懸命目で追いながらセリフを聞き取るのだ。
課題はNBCの人気ドラマ「Friends」(30分番組)。
分からない単語が出てくるたびに辞書を引きながらビデオのリモコン片手に巻き戻しと再生のくり返し。
バカバカしいと思うなかれ、これがけっこう効果がある。
留学の先輩たちも口を揃えてお薦めする学習法なのだ。
5〜6回もくり返せばキャプションなしでも聞き取れるようになってくるから面白い。
メールをチェックすると、なんとダイヤモンド社の雑誌「エグゼクティブ」の編集者さんから取材の依頼が来ているではないか。
なんでも、このホームページを見たという。
取材する側の苦労を重々承知の僕はもちろん快諾。
はたして、どんな展開を見せるのか、乞うご期待!
7月12日(日)
朝起きて、インターネットで参院選の開票速報をチェック。
かつていくつかの選挙特番に関わった僕としてはやっぱり気になる。
と言っても、今一番の関心は選挙結果が為替に及ぼす影響だったりするのだけれど(苦笑)。
はたして自民党の大敗は吉と出るか、凶と出るか。
7月13日(月)
いつものように学校へ。
教室に現れたフーバー教授はなぜか顔を真っ赤にして怒っている。
まるで赤鬼だ。
「私の授業を誰も聞いてないんじゃないか?」
そう、先週末に提出したインクラスエッセイの出来が相当悪かったらしいのだ。
ところが、実際に返却されたエッセイを見てびっくり。
なんと今までで最高の80点! 嬉しい。
シ〜ンと静まり返った教室でエッセイにおける具体例がいかに重要かを力説する赤鬼さんの説明を僕はニヤニヤしながら聞いていた。
実は、先週、改めて日本から持ってきた「英文エッセーを書く技術」(アルク・2200円)と「大学院留学入試エッセー 質問分析と構成法」(アルク・3500円)をざっと読み返したのだが、効果は抜群。


まさに今授業で習っている内容を日本語で読めるというのは効率的だ。
これから留学しようと思っている人には自信を持ってお薦めします。
7月14日(火)
そろそろ本格的にアパート探しをしなければならないのだが、どうもものぐさになってしまって不動産屋さんに足は向かない。
そこで思いついたのがインターネット。
どうせならアパート探しもインターネットでやってやれ、と思ったのだ。
サーチエンジンで探してみるとアパート情報を掲載しているホームページはたくさんある。
だが、肝心の住所や家賃が書かれていないところがほとんどだ。
やはりお金を払わなければ情報は入手できないらしい。
いろいろ調べた結果、選んだのは「Renters Express」というホームページ。
クレジットカードで$49払うとアパートのリストが載っているページにアクセスできるパスワードが送られてきて、メンバーシップは3ヶ月間有効。
リストは毎日更新され、24時間アクセス可能。
しかも、もしこのリストに載っていないアパートと契約したらお金は返却すると書いてある。
悪質業者じゃないことを祈ってクレジットカードの番号を入力すると、すぐにパスワードが送られてきた。
リストのページにアクセスしてみると、合計132件のアパート情報が並んでいる。
残念ながら僕が希望する条件に合うアパートは今のところないが、今後の更新に期待しよう。
7月15日(水)
いつものように学校へ。
ESLの授業スタートから丸1ヶ月たち、フーバー教授の厳しさにもすっかり慣れた気がする。
教室の中にはこれまでの提出物やクイズの得点が一覧表になって張り出されており、自分の成績が一目で確認できるようになっている。
850点満点(残りの150点は期末テストか?)中600点以上がCR(クレジット=単位がもらえる)のようで、僕は今のところ何とか650点をキープしているが、クラスの半分近くはNC(ノンクレジット=落第)。
みんな毎日この表とにらめっこしてヒーヒー言いながら頑張っているのだ。
今日もさっそく15分ジャーナル。
お題は「キミはなぜアメリカに来たのか? 何を目標に勉強しているのか?」
これは楽勝。
出願時に書いたエッセイの内容を思い出しながら時間内にまとめ上げる。
何と、今までで最高の190ワード。
やはり書く内容が頭の中でまとまっていれば話は早い。
文法の授業の後、関係代名詞のクイズ(25問・30分)。
フーバー教授曰く「このクラスのクイズの中で一番難しい」とのこと。
覚悟して取り組むが、確かに難問ぞろいだ。
自信を持って答えられたのは6割くらいだろうか。
はたして、点数やいかに。
アパートに帰ってきて、家賃を払いがてらマネージャーに来月引っ越す旨を伝える。
退出の1ヶ月前に通知しなければならないのは日本と同じ。
必要書類にサインして手続きは完了だ。
このアパートにいられるのも8月14日まで。
それまでに次のアパートを決めなければならない。
昨日申し込んだ「Renters Express」のホームページにアクセスすると、新しく134件の情報が並んでいる。
さらに「毎月1日と15日の後に大量の情報が加えられる予定」と思わせぶりに書いてある。
僕もそうであるように、賃貸契約の区切りが1日と15日ということなのだろう。
明日の夜の更新に期待したい。