「Los Angeles 留学日記」
大学院98年秋7
(1998年11月6日〜)
11月6日(金)
午前10時起床。
Coffee Hourの前にTheoと軽く打ち合わせをする約束をしていたのでいつもより少し早く学校へ。
あんなに自信満々で答えていたから、今日第一稿を受け取って僕が清書すればいいのかなぁ、なんて思っていたのだが、そうは問屋がおろさなかった。
他の課題が忙しかったのか、それとも思ったより大変だったのか、彼はほんの1ページのメモ書きだけしか作っていなかったのだ。
しかも、シラ〜ッとした顔で「2人それぞれが草案を作って、そのいいところを合わせればいいんじゃないかな」なんて言う。
おいおい、昨日と言ってることがずいぶん違うんじゃないの!?
「30分でチョチョイのチョイ」はどうしちゃったんだ!?
とは思ったが、そもそも僕が彼に甘えようと思っていたのがいけなかったんだし、僕が彼の英語を聞き間違えたのかもしれない。
「分かった。じゃあ、お互いの草案をメールでやりとりしよう」と答えてTheoと別れる。
う〜ん、けっこうショック。
今週末は勉強にかかりきりになりそうだ。
少し遅れてCoffee Hourに顔を出すと、コリアタウンにランチを食べに行く計画は明日に延期され、しかも行き先がチャイナタウンの飲茶に変更されていた。
「Hiroも当然行くよな?」と誘われたが、僕にはついさっき与えられたばかりの大きな宿題がある。
「ごめん。明日はちょっと約束があってダメなんだ」と断らざるを得なかった。
11月7日(土)
午前10時起床。
さっそくKinko'sの企画書にとりかかる。
第一稿の段階で必要なのは「クライアントの分析」「クライアントの問題点と解決方法」「ビデオを見るオーディエンスの分析」「ビデオの目的」「具体的な教育内容」の5点。
一昨日のマネージャーインタビューで従業員が必ずしも全てのソフトについての知識を持っていないことや、それを解決するためのプログラムを持っていないことが分かっていたから、「これらの問題点をクリアするための従業員教育ビデオ」という線でいくことにする。
しかし、例によって英語を書くのは本当に骨が折れる。
企画書なんて日本語で書く時だって悪戦苦闘するのに、自分の言いたいことを英語の適切な表現に置き換えるのは至難の業だ。
まるで利き手と反対の手でリンゴの皮をむいているようにイライラする。
夕方、篠原さんが来て「Inside Edition」の翻訳作業。
終わったところで一緒に宝くじを買いに行く。
僕らが買っているのはSuper Lottoというカリフォルニア州の宝くじ。
1から50の中から好きな数字を6個選んで、それが全て的中すれば賞金がもらえるというやつだ。
1枚1ドルで毎週水曜と土曜が抽選日。
賞金は400万ドル(1ドル=120円計算で4億8000万円!)からスタートして、当選者が出なければ全額次回に繰り越しというシステム。
僕と篠原さんはこの賞金が1000万ドルを超えた回に限り1人1ドルずつ買っているのだ。
ここしばらく当選者が出ていないようで今日の賞金は何と2700万ドル(32億4000万円)!
久々の大勝負ということで、いつもの倍、2ドルずつ奮発することにした。
KojunとKanaちゃんからも2ドルずつ預かってきたので合計8ドル分。

当選確率はいつもの4倍だ。
4人で頭割りしても1人8億1000万円!
これが当たればもう学費の心配をしなくても済むし、Max Foodsからも卒業できる(笑)。
夜8時、抽選直後にインターネットで当選番号を調べようとしたらアクセスが集中しているようでつながらない。
やっぱりみんな考えることは同じか。
しょうがないので再びKinko'sの企画書。
頭がウニのようになりながら何とか第一稿を書き上げ、Theoにメールを送る。
さあ、もう一回当選番号を調べるぞ!
11月8日(日)
午前10時起床。
昨夜は久しぶりの雨だったが、僕が起きた頃にはすっかり上がっていた。
朝食にブリの煮付けを食べてから、Macに向かう。
今日はHさんから依頼された新番組の企画書書き。
日本語で書くのだから楽だなぁ、なんて思っていたのだが、そうはいかない(笑)。
いつもとは悩みどころが違うのだ。
授業レポートの場合、「何を書くか」は頭の中でまとまっていることが多い。
自分が言いたいことが伝えるには「英語でどう表現するべきか」を見つけるのに時間がかかるのだ。
一方、今回の場合は「何を書くか」というのが問題。
頭に浮かんだ玉石混淆のアイデアを取捨選択して体系的に整理する段階でまず悩んでしまうのだ。
今回は大枠のコンセプトも決まっているし、叩き台となる草案があるだけまだ楽なのかもしれないけれど…。
最後に簡単なタイトルロゴをPhotoshopで作って一通りの企画書が完成。

結局、夕方までかかってしまった。
「週明けまでに」という約束だったのだが、日本はもう月曜日の昼。
慌ててメールを送る。
ところで、気になる宝くじは6個の数字のうち最高2個しか当たらないという大ハズレだった(笑)。
11月9日(月)
午前10時起床。
うん、ここのところ規則正しい生活をしてるなぁ。
明日のクイズに備えて恒例の一日漬け。
テキストの「カメラ」について書かれた20ページをコツコツ読んでノートにまとめていく。
基礎知識がある分だけ「照明」よりは理解しやすいが、ネックになるのはやはり辞書に載っていない専門用語。
「Focal length」が「焦点距離」だというのは分かったのだけれど、「Depth of field」というのが何を指しているのか分からない。
「レンズの口径が大きくなるに従ってDepth of fieldが小さくなる」というのだけれど…。
直訳すれば「視野の深さ」だが、日本ではどんな用語をあてているのだろうか?
言葉があって初めて抽象的な概念を理解できるという現実が身にしみる。
夕方までに一通り終わったので、食料の買い出しに出かける。
それでは、「Max Foods」本日のお買い得情報〜!

本日の目玉商品は、1袋50¢のスパゲティーと1缶99¢のミートソース!
ミートソースといっても日本のように挽肉がたっぷり入っているものはスーパーでも見かけない。
感覚的にはトマトソースといった感じだ。

続いては、Lサイズ卵18個入りパック。$1.69!
日本では1パック10個入りだが、こちらでは12個入りか18個入りが普通。
Limit2(お一人様2点限り)という表示に乗せられて、つい2パックも買ってしまった。
というわけで、現在、我が家の冷蔵庫には卵が何と36個!
しばらくは卵料理が続きそうだ(笑)。
ちなみにこちらの卵には防腐剤のようなものが入っているため生で食べてはいけないらしい。
日系スーパーに行けば生食用の卵も売っているのだけれど値段がちょっと高め。
僕はアメリカに来てから「卵ぶっかけご飯」を食べていない。
僕が9年以上お世話になった文化放送「梶原しげるの本気でDONDON」の本がいよいよ今月発売になると笹生さんがメールで教えてくれた。

残念ながら僕は本の制作に関われなかったけれど、内容の濃さは保証します!
興味のある方はぜひ手に取ってみて下さい。
11月10日(火)
午前7時起きで学校へ。
駐車場に停めた車の中で最後のノートチェックをしてCorporate and Instructional Mediaのクイズに臨む。
今日のクイズは初めて選択式の問題が5問とエッセイが4問。
なんでも来週木曜日にある2回目のMidtermの予行演習だという。
出来はまあまあ。
7〜8割はできたと思う。
結局Theoがメールを送ってこなかったので自分の第一稿を提出するつもりでzipディスクにファイルを入れて持ってきたのだが、彼は遅れて教室に入ってくるなり「ちょっと直した方がいいと思うんだよね」と原稿に筆を入れ始める。
おいおい、チョチョイのチョイってそういうことだったのか(笑)。
まったく調子のいい奴だ。
Computer Fundamentals for Multimediaのビデオ制作はいよいよ大詰め。
Premiereの使い方もだいぶ分かってきた。
明後日までにはほぼ完成できるだろう。
ところで、この「Los Angeles留学日記」のファイルがプロバイダのディスク容量の限界に近づいてきた。
IIJ4Uからの割り当てはたったの2MBしかないのに、最近調子に乗って写真をたくさん載せていたからかな。
近いうちに引っ越ししなければなるまい。
とりあえずの第一候補は一応まだアカウントを持っているNiftyserve(ディスク容量10MB)。
CSUNからスペースをもらえればそこに置くという手もあるのだが、できれば卒業後もずっと置いておけるところの方がいいもんなぁ。
早急に決めなければ。
アパートに帰ってのんびりしていたら某制作会社の大御所Yさんから電話。
何と、先日のとは別にまた新しい企画書の発注だ。
締切は来週の月曜日。
L.A.まで来てこんなに仕事をいただけるというのはありがたい限り。
ふう。今週末もまたフル回転だ。
ところで、昨日の日記に書いた「Depth of field」について、CyberLawさんと藪暁彦さんから「日本語の『被写界深度』と言う言葉にあたるのではないか」というメールをいただきました。
ものの本によると「ピントを合わせた被写体と同じ距離にあるものには焦点が合いますが、その前後でぼけの量が小さいためにピントが合っているように見える範囲のことを被写界深度と言います」とのこと。
なるほど。確かにテキストの説明は英語でこういうことを言っているように思えます。
それにしても“打てば響く”とはまさにこのこと。
同時性、相互性、知識の共有なんていうインターネットの利点を身にしみて実感させていただきました。
いろんな方がこのページを読んで下さっているんですね。
ホームページを作って本当によかったと思える瞬間です。
今後ともよろしくお願いします。
11月11日(水)
午前10時半起床。
先週末からの疲れがたまっているのか、昼間からボ〜ッとしてしまった。
テキストを読もうにも集中力がなく、すぐに放り出してしまう。
気分転換に「How to moonwalk」ビデオの編集。
これまでカットつなぎしてあった編集点をディゾルブ(いわゆるオーバーラップ)やワイプ(画面を拭き取るようなつなぎ方。分かりますか?)などいろいろな方法でつないでみる。
イメージに合わなければ何度でも簡単にやり直せるのでついついハマり込んでしまい、気がついたら夕方の6時。
ディレクターが編集室で一晩中悩む気持ちが少しだけ分かったような気がする。
「日刊サン」を取りにNijiyaへ行ったのだが何故か一部も置いてない。
おかしいなぁと思いながらアパートに戻り、カレンダーを見たところで気がついた。
今日はVeterans Day(退役軍人の日)で祝日なのだ。
そうか、どうりで郵便が何も来てないはずだ。
それにしても世の中が休みでも全然気がつかないなんて、どういう生活をしているんだか(笑)。
「Los Angeles留学日記」の引っ越し先はほぼNiftyserveで決まりそうです。
今週末にでも時間を作って作業します。
無料で掲示板が置けるようなのでみなさんぜひ遊びに来て下さいね。
今後ともよろしくお願いします。
11月12日(木)
午前7時起床で学校へ。
Corporate and Instructional Mediaの授業はStomes教授がお休みで、同じガス会社でプロデューサーをつとめる女性が代理講師としてやって来た。
彼女が実際にビジネスの現場で作ったビデオと企画書を題材にクラスディスカッション。
自己紹介の時に「日本で企業ビデオを作ったことがある」と言ったのが彼女を刺激してしまったのか、「あなたが作ったものと何がどう違う?」などと質問責めにされ、アタフタしてしまう。
本当はいろいろ違う点があって全部説明したいのだけれど、いざとなると上手く英語で説明できない。
「企画書に予算まで書き込むのはプロデューサーの仕事で僕はそこまでやったことはない」などと適当にお茶を濁すしかできなかった。
はぁ、情けない。
Computer Fundamentals for Multimediaは来週火曜日の発表を控えてHow to video制作の最終日。
僕とJoeの「How to moonwalk」は見事なチームワークで順調に作業が進み、無事完成した。
我ながら満足のいく出来で火曜日の発表が楽しみだ。
最後はEnglish conversation。
他の授業と違って日常会話が中心のこのクラスはなかなか実践的で役に立つ。
最初の頃は耳がついていかなかったのだけれど、今日は8割方聞き取れただろうか。
しゃべる方も文法がメチャクチャでもとにかくしゃべり倒せば何とか分かってもらえるというのが経験則。
恥ずかしがって遠慮していたのでは一歩も前進しないのだ。
「習うより慣れろ」というのが語学の鉄則だとしみじみ思う。
アパートに戻ってきて近所のCreative Computersというパソコンショップへ。
そう、篠原さんがついにiMacを購入したのだ。
本体を定価の$1299で買うと、何と32MBメモリと$72相当のスキャナがおまけでついてくるという大サービス。
しかも最初からMac OS 8.5インストール済み。
日本語のアフターケアをあきらめても十分お釣りがくる買い物だろう。
僕もここで買えばよかったかなぁ。
「大学院98年秋6」 「大学院98年秋8」
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