「Los Angeles留学日記」

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「Los Angeles 留学日記」

98-99年冬休み編4
(1999年1月19日〜)

1月19日(火)

夕方、Language Exchange Programに参加すべくリトルトーキョーのJACCC(日米文化会館)へ。
これは英語を身につけたい日本人と日本語を学びたいアメリカ人がお互いの知識を交換する目的で開かれている無料のプログラム。
月曜から金曜の毎日午後6時から9時まで日米文化会館のB4ルームで行われている。

部屋に入ると20人くらいがざっくばらんな雰囲気で言葉を交わしている。
「初めて来たんですけど…」とオドオド声をかけた僕を暖かく迎えてくれたのはホストの日系3世、リチャード塩見さん。
裁判所で日英通訳の仕事をしているという彼によると今日は比較的アメリカ人が少ないとのこと。
それでも6〜7人はアメリカ人だろうか。

しばらく塩見さんと話した後、コンピュータプログラマーをしているという男性のグループに加わる。
彼の日本語学習歴は8年。
易しい漢字なら読み書きできるという彼が日本語の教科書を取り出して僕に質問してきた。

「よろしくご指導お願いします」
「よろしくご指導のほどお願いします」

この2つの文はどう違うのか、「のほど」はどんな意味なのかというのだ。

うわぁ、困った。
全然説明できない!
とりあえず和英辞典を引くと「ほど」には[およそ][程度][限度][比較]という4つの意味があると書いてあるが、どれもピタッとハマらないような気がするのだ。
「ごめんなさい。うまく説明できません。今度までに調べておきます」と答えるしかなかった。

参加者全員がボランティアであるLanguage Exchangeなのだからgive and takeは当たり前。
しかし、「日本語を使う能力」と「日本語を正しく説明する能力」は別物なのだということをいきなり思い知らされたのであった。

それは置いといて、英語を話す機会という意味ではほぼ満足。
日本人、アメリカ人とも実に様々なバックグラウンドの人が集まっているようで、利用価値は高いと感じた。
何と言っても無料だというのがありがたい。
今週の木曜日は各自が食べ物を持ち寄ってのパーティー形式でもっと大人数が集まるということなのでまた顔を出してみようと思う。

実は、帰り際にちょっとしたトラブルがあった。
僕がこのホームページ用に撮ったデジカメ写真に1人のアメリカ人が「オレは写真を撮られたくない! 消去しろ!」とクレームをつけてきたのだ。
これまでも常に頭の片隅で考えていたし、今後もインターネットを含むメディアに関わっていく以上避けては通れない問題だから、これを機に考えを整理してみようと思う。

今回の事実関係で言うと、

1. 僕は事前に主催者である塩見氏に写真撮影の許可を得た。
2. 写真を撮る時にジェスチャーで「これから写真をとるよ〜」とその場にいる人たちに伝えた。
3. 写真自体は教室雑景というもので写っている人物を特定することはほぼ不可能である。

実はこの3つは日本のあるテレビ局が街頭撮影のルールとして自主的に決めた原則をふまえたもので、僕はこれらを理由に彼の申し出を拒否することもできたかもしれない。
が、よく考えた末、僕はこの写真を載せないことに決めた。

理由の第一はインターネットにおける肖像権やプライバシーの統一ルールが決まっていないこと。
簡単に国境を越えるインターネットにおいては日本のルール(あるいは一テレビ局の自主規制に過ぎないローカルルール)を安易に絶対視するべきではないと思うのだ。
もちろん国境を越えた統一ルールがそんな簡単にできないであろうということは承知の上である。

第二に被写体である彼はこの写真がインターネットで公開されるであろうことを想定できなかったであろうということ。
テレビの街頭撮影ならカメラや機材を見ただけでその映像が公開されるということをある程度想像できる。
が、僕が持っていたデジカメからその写真がインターネットに載ることをはたしてどのくらいの人が想像できるだろう。
この点、テレビとインターネットは大きく異なると思う。
インターネットでは誰もが情報発信者になり得るのだ。

第三にメリットとリスクのバランス。
もし彼が違法滞在者でこの写真を見た当局に強制送還されてしまったら…。
もし彼が仕事をさぼっていてこの写真を見た雇用主から解雇されてしまったら…。
もし彼の隣に写っていたのが不倫相手でこの写真をきっかけに離婚することになってしまったら…。
まさかそんなことはないと笑い飛ばすのは簡単だが、彼のクレームはそこに何らかのリスクがあることの表明である。
その明らかなリスクを押してまで写真を公表する意味があるのだろうか。
あるかもしれないし、ないかもしれない。
もしこの写真がクリントンとモニカ・ルインスキーの決定的瞬間だったらどうだろう。
社会的意義が大きいからと僕は写真を公表すべきだろうか?
正直言って分からない。

こう考えてくると僕が今までに公表した写真や文章によって迷惑を受けた人がいないとは限らない。
ただその人は僕にクレームを表明するチャンスがなかっただけかもしれないのだ。

表現の自由は時として表現される側の不自由をも意味する。
それでも僕は何かを伝えたいと思う。
何を書き何を書かざるべきかは僕の良心を基準にするという他はなく、全ての責任は僕に帰する。
当たり前のことではあるが、そうとしか言いようがないのだ。

はぁ。しんどいなぁ(苦笑)。

アパートに帰って国語辞典で「ほど」を引いてみた。

ほど 【程】((名・副助))
<2>《敬語的に、直接の表現を避けて》その状態であること。
「御自愛のほどをお祈り申します」「何とぞ御容赦のほどを」

おおっ、これだ!
でも、これを外国人に分かるように説明するのは大変だぞ(笑)。

1月20日(水)

午前10時起床でGEOSへ。
教室に入るとJohn先生はニヤニヤしながら1枚のコピーを僕に手渡しこう言った。
「今日はHiroに僕の勉強を手伝ってもらおうと思ってね」

渡された紙を見ると、それはLSAT(アメリカのロースクールに入るのに必要な試験)Analytical Reasoningの問題だった。
「勉強を手伝う」というのはもちろんジョーク。
問題を解きながら何故その答えを選んだのか英語で説明してみろということだ。

[条件]
  1 8人の大人が正方形のテーブルの縁に沿って座る。
  2 それぞれの縁には同じ数の大人が座る。
  3 女性は常に男性の隣に座る。
  4 全体の半分は女性である。
  5 女性は常に男性2人の間に座る。

[問題1]
  次のうち真でないのはどれか?
   (A)男性は常に女性の対面に座る。
   (B)男性は2人の女性にはさまれて座る。
   (C)2人の男性は決して隣り合って座らない。
   (D)同性は互いに向き合って座る。
   (E)隣り合った席は常に男性と女性に占められる。

[問題2]
  1人の男性が右隣の女性と席を代わった場合、真となるのは次のどれか?
   (A)1つの縁には男性のみが座っている。
   (B)1つの縁には女性のみが座っている。
   (C)少なくとも2つの縁には男性と女性が座っている。
   (D)2つの縁には男性のみが座っている。
   (E)全ての縁に男性と女性が座っている。

GREにも似たようなセクションがあったから要領は分かっている。
この手の問題は図を描けば一発だ。

[問題1]の正解はもちろん(D)。
だが、それを言葉で説明しろというのは無茶だ。
ノートに描いた図を示しながら「全ての条件を満たすと向かい合って座るのは異性になる。よって(D)は真ではない」と説明する。

[問題2]はひっかけ問題。
描いた図によっては(A)(B)(C)(E)のどれも正しいように思えてくる。
実は2通りの図が考えられるのだが、どちらでも真になるのは(C)のみ。
とりあえず正解にはたどり着いたものの、それを説明する僕の英語はメロメロだった。

アメリカで法律家になるには(いや、GREもそうだから大学院生になるにはと言うべきか)論理的思考能力が必要とされるという。
だけど、こんないじわるクイズみたいな問題で論理的思考能力が測れるもんなのだろうか?

後半は先週の予告通り政治についてのトーク。
時々分からない用語が出てきたものの、全体としては楽しく進んだ。

アパートに帰ったら実家からの定期便で本と雑誌が届いていた。
毎度のことながらありがたいことだ。

1月21日(木)

午後1時起床。
届いたばかりの「日経Mac」「日経エンタテイメント」を読みながらのんびり過ごす。
「山川の世界史」はちょっとだけ後回しだ。

部屋でボ〜ッとしていると階下に停まった車のカーステレオから聞き覚えのある曲が流れてきた。
おっ、安室奈美恵の「Can you celebrate?」じゃないか。
窓を開けると車の主は隣の部屋に住むSpencerじゃないか。
「ヘイ、これ、日本の曲だろ? ナミエ・アムロを知ってるのかい?」と聞くと
「名前は知らないけど髪の長い女性シンガーだろ? お気に入りさ」と彼は答える。
L.A.では日本のCDを手に入れるのは簡単だから彼が安室奈美恵を聞いていても不思議じゃない。
何だかちょっと嬉しいような気もする。

夕方、Language Exchange Programに参加すべくリトルトーキョーのJACCC(日米文化会館)へ。
今日は月に一度のパーティー形式ということで人数も火曜日よりずっと多い。
40人近くはいただろうか。

最初に話したのは日系2世だという87才のおばあちゃん。
もちろん日本語も話すのだけれど英語の方がずっと楽だという。
一度話したことをすぐ忘れて同じ質問をくり返されるのにはちょっと閉口してしまったけれど(笑)、リピート学習だと思っておこう。

次に、火曜日にも話した日本語学習歴8年のコンピュータプログラマーを発見。
名前はケントだという。
火曜日に答えられなかった「ほど」の意味について辞書を片手に説明すると何とか理解してくれたようだ。

日本語もかなり上手な彼にこんな質問をしてみた。
「日本人にとっては英語の『L』と『R』の違いや『th』の発音が難しいけれど、アメリカ人にとっては日本語のどんな発音が難しいの?」
彼の答えは『長音』と『短音』。
例えば「兄弟(きょうだい)」と「巨大(きょだい)」の使い分けが難しいのだという。
そう言われてみれば「そうですね」を「ソデスネ」と発音する外国人は多い。
日本人にとっては何でもない発音が彼らにとってはとてつもない難問になるのだ。
逆に言えば『L』と『R』の違いなんてアメリカ人にとっては何故難しいのか理解に苦しむことなんだろう。

最後に20才くらいの台湾人と。
彼は「金城武」と書いたノートを見せながら「ナントヨミマスカ?」と聞いてきた。
僕はもちろん「かねしろたけし」とクリアな発音で答えてあげる(「きんじょう」じゃないよね?)。
「驚く」「歩く」「涙」…彼の質問は主に漢字の読み方について。
そう、中国語が母国語である彼は漢字の意味は知っていても日本語の訓読みが苦手なのだ。
日本語を説明するのに互いの共通語である英語を使った方が話が早いというのも面白い。

L.A.に来てから8ヶ月、いろんな人に助けられてきたが、こんなことで誰かの役に立てればお安いご用だ。
その上英語の勉強にもなるのだから一石二鳥。
学校の授業と違って簡単な日常会話のレベルだけれど、今の僕にはそれでも十分有意義だ。

1月22日(金)

午前10時起床。GEOSへ。

前半は今日も前回に続いてLSATの問題。
英語で物事を論理的に説明するにはいい訓練だ。

後半の話題はインターネット。
John先生は今どきインターネットを使っていないという珍しいアメリカ人なので、彼の質問に対して僕が説明するというスタイルで授業は進む。

「モデムっていうのはどんな働きをするんだい?」
「ゴア副大統領が提唱している“スーパー情報ハイウェイ”って何なんだ?」
「ネットにチャイルドポルノや化学兵器の作り方といった情報が流布するのは規制できないのかい?」
「ネット上ではプライバシーは保護されていないんじゃないのかい?」

いつもとは逆に僕がホワイトボードの前に立ち、図を描きながら説明する。
まるで会議で企画をプレゼンテーションしている気分だ。
頭の中で考えがまとまっていることを説明するのは面白いし、“社会派(笑)”John先生との議論はなかなか楽しい。
授業のディスカッションやプレゼンテーションもこんな風にいけばいいんだけどなぁ。

明日はKojun25回目のバースデー。
ということで夜は正月に買ったマグロとサーモンの残りで手巻き寿司パーティーだ。

満腹になったところで何と久々のカラオケ!
“小室系”を気持ちよさそうに歌う若者たちにサザンやミスチルで対抗だ(苦笑)。
気がついたら朝の5時まで歌っていた。
う〜む、何かストレスでもたまっていたのだろうか(笑)。

1月23日(土)

午後4時起床。
昨日の徹夜ですっかり昼夜逆転してしまった。

夕方、篠原さんと「Inside Edition」翻訳作業。
今週は使えそうなネタがいくつかあった。

頼んでいたMac OS 8.5日本語版が到着したのでインストールがてらハードディスクの整理整頓。
L.A.に来てから撮ったデジカメ画像など貴重なデータを消さないよう慎重に。

そして、いつも読んで下さっているみなさんにご報告です。
先日の日記でお知らせした「Los Angeles留学日記」CD-ROM付き書籍出版について出版社の方から正式決定のメールが来ました。
とても嬉しいです。
どんなに眠いときも頑張って更新して来れたのはひとえに読んで下さっているみなさんの応援があってこそだと僕は思っています。
メールを通じていただいた貴重な情報、有意義なアドバイス、叱咤激励やアクセスカウンターの数字がなかったらとっくに挫折してしまったに違いありません。
本当にどうもありがとうございます。

もちろんこれからも日記は続いていきますし、出版までの進行状況もしっかり公開していきたいと思っていますので、今後ともどうぞよろしくお願いします。

1月24日(日)

午後3時起床。

昨日に引き続きMac OS 8.5日本語版のインストール作業。
一通り済んだのだが、8.5をインストールしたハードディスクからは何故かインターネットに接続できない。
古いハードディスクから起動してインターネットに接続し、解決策を探すもいまだダメ。
しばらくはこのままいくしかないようだ。

う〜む、こんなんで一日が終わってしまうなんて…。

1月25日(月)

午後10時起床でGEOSへ。
週末の夜更かしがたたって寝不足のままの授業となってしまったが、やはりいかん。
時々集中力がとぎれてJohn先生の英語を聞き逃してしまうのだ。
どんなに疲れていても日本語なら無意識に頭に入ってくるのに、まだまだ英語はそんな域には達していないんだなぁ、としみじみ実感させられた。

今日のJohn先生の質問で面白かったのは「Hiroは自分で自分を分析するとmathematicalな人間か、それともartisticな人間か?」というもの。
「数学」と「芸術」が対立する概念だというのがまず興味深かった。
さらにJohn先生は「logicalかcreativeかとも言い換えられるね」と。

う〜む。
僕は「数学的・論理的人間」なのか、それとも「芸術的・創造的人間」なのか。
「創造的」でありたいとは思うけれど、「芸術的」ではないような気がする。
女の子によく「あなたは理屈っぽい」って非難されることを考えるとやはり「論理的」なのか(笑)。

出願時のエッセイにも書いたけれど、僕は「芸術家(Artist)」ではなく「職人(Artisan)」でありたいと思っている。
「真実を追究するために自己を突き詰める」というよりも「僕が作ったものをみんなが喜んでくれる」ほうが何倍も嬉しいのだ。
が、アメリカ人が言う「Art」という言葉は僕が思っているよりも領域が広いような気がする。
いわゆるクリエイティブなものは全部アート。
そこに真実とか文化なんていう要素は関係なし。
僕に言わせれば「アートってもっと崇高なもんじゃないのかよぉ」という感じなのだ。
ってなことをJohn先生にも説明したのだが、なんだか分かったような分からなかったような顔をしていたなぁ。

そんなGEOSからの帰り道に事件は起こった(笑)。
ガムを噛みながら車を運転していたら口の中に固いものが「ガチッ」。
何と、虫歯の治療で詰めていた金属がはずれてしまったのだ!
アメリカの歯医者は高い上保険が効かないと聞いていたので渡米前に全部治療したのに…。

幸い金属は原形をとどめていたのでもう一度穴にハメ込んでみる。
おおっ、うまく元通りになったぞ。
と安心したのもつかの間、夕食を食べていたら再び「ガチッ」。
う〜ん、ダメかぁ。

かと言って歯医者に行く金はないしなぁ。
こうなったら瞬間接着剤でも使ってみるか!?
そんなバカな…。

そうそう、インターネットに接続できない件は無事解決しました。
どうやらInternet Configの古いバージョンが残っていたのが悪かったようです。

1月26日(火)

正午起床。
今日のL.A.は珍しく雨。
たまにはおしめりもいいもんだ。

朝食兼昼食を食べていると、口の中が気になって食べることに集中できない。
しょうがない、出費を覚悟で歯医者に行くか。
とは言っても日本語が通じないのはやはり心許ないのでJapan Publicityの電話帳で日系の歯科医を探す。
我が家から一番近そうなのはSawtelleの松村歯科医院だ。

電話して気になる治療費を聞くと、まず検査に$30、レントゲン写真に$30、そして治療に$80で合計$140が最低ライン。
もし虫歯が拡大していたらその治療にあと$150はかかるという。
う〜ん、この出費は痛いが、ずっとこのままにしておくわけにもいかないしなぁ。
よし、治そう!
どうやら混んでいるようで予約が取れたのは来週月曜日の午後5時。
それまでは右奥歯を使わずにご飯を食べなければならない。

雨ということもあって一日中閉じこもって読書三昧。
で、「アメリカ手話留学記」高村真理子・著(径書房)読破。

これは書名から想像できるように、高度難聴である著者の留学記。
何と、CSUNの先輩でもある高村さんが僕のホームページを偶然見つけ、わざわざ送って下さったのだ。
一学期間通ったにもかかわらず、僕はCSUNにNational Center on Deafnessをはじめ聴覚障害者のためのサービスが充実しているということを知らなかった。

授業や友だち、寮生活のことなどを生き生きと書いているこの本だが、一番の読みどころはやはり著者の奮闘ぶり。
誤解を恐れずに思い切って書くが、今の僕は聴覚障害を持つ人の不安がよく分かるような気がするのだ。
例えば、

完全には、先生の言っていることを聞き取れないので、指名されて答えられなかったらどうしようと、いつもビクビクしなければならなかった。
だから、よく質問する先生の授業に関しては、予習をすっかりやって、先生の話していることを察することができるようにしていた。

(「アメリカ手話留学記」28ページ)

これはまさに今の僕じゃないか。
相手の言っていることを理解するのが難しく自分の言葉が相手に正確に伝わらないというコミュニケーション不全の状態がいかに人間を不安にさせるかというのは身にしみている。
そんなとき思いやりのある人の助けがどんなにありがたかったことか。
決して特別扱いして欲しいのではなく、ほんのちょっと想像力を働かせて欲しいのだ。

1月27日(水)

午前10時起床でGEOSへ。

前回の授業で僕が怪訝な顔をしたからだろうか、前半の授業は「Art」について。
John先生はわざわざモネやAndy Warholの作品集を持ってきて僕に議論をふっかける。
問題はやはり「Art」という言葉の定義のようだ。

John先生は「これはあくまで僕の定義だけど」と前置きをした上で、「Art」だと考えられるものを次々と挙げていく。
絵画、彫刻、音楽、ダンス、演劇、歌唱、写真、映画、小説、詩はもちろん「Art」。
漫才師(Standup Comedian)も「Artist」。
タブロイド紙記者も程度は低いけれど「Artist」。
テレビディレクターや放送作家も彼の定義によれば「Artist」だ。
一方、ジャーナリストやニュースキャスター(アンカーパーソン)は「Artist」ではないという。

英英辞典を引いてみると「Art」とは「美しいと考えられる創作物」の他に「多くのskillを必要とするもの」とある。
要するに特殊な技術を用いて何か新しく創り出されたものを広く指すのだろう。

念のために国語辞典で「芸術」を引いてみると「美を表わす活動の総称」とある。
興味深かったのはその反対語が「科学」「宗教」であることだ。
「科学」が客観的なもので「宗教」が絶対的なものだとすると「芸術」は主観的で相対的だっていうことかな。
う〜ん、分かったような分からないような…。
いずれにしても「Art」と「芸術」の間には微妙なズレがあるということは理解できた。

後半はテープを使ってTOEICのリスニング問題。
驚いたことによく聞き取れるんだ、これが。
僕の耳もだいぶ“英語の周波数”に順応してきたのかな。
今ならTOEFLのリスニングもなかなかの点数が取れるかもしれないぞ。

帰り道、何だか急に海が見たくなって1人でMarina del Reyへ。

車を停めて1時間くらいボ〜ッと海を眺めていた。

1月28日(木)

正午起床。
来週から学校が始まるというのに、な〜んか虚脱感。
特別なことは何もしていないのだが、ちと疲れがたまっているのかもしれない。
Language Exchangeに行かなくちゃなぁ、などと考えながら結局アパートから一歩も出ず、ぼんやり本を読みながら過ごす。

夕方、電気代のビルをチェックしてビックリ!
2ヶ月分で$103.12の請求なのだ。
しかもこれは低所得者割引による$18.32を差し引いての金額。
前回が$64だから実質$57.44も多く使ったことになる。
う〜む、これはいかんぞ。

心当たりといえば「天井暖房」。
最近気づいたのだが(もっと早く気づけって(笑))、僕の部屋には電気を使った天井暖房の設備がある。
それを暖房のスイッチとは知らずに一時期ず〜っとつけっ放しにしていたことがあるのだ。
エアコンと違って音が全くしないので気がつかなかったが、きっとそれに違いない。
痛い出費だなぁ。

「憂鬱な希望としてのインターネット」村上龍・著(ダ・ヴィンチ編集部編/メディアファクトリー発行)読了。
『言葉を扱う人がネットに拒否反応をもつのは損だと思います』
僕もそう思います、はい。

1月29日(金)

午前10時起床。
今日がGEOS最後の授業だ。

「最後だからHiroの専攻分野であるマルチメディアの話をしよう」とJohn先生。
既存メディアとの違いやインターネットの可能性について、そしてエンタテイメント職人たる僕がそこにどういう形で関わっていきたいかというようなことを思う存分語る。
実はこの手の話題は出願時のエッセイをはじめ、「何のために留学してきたの?」という質問への答えとして何十回も話してきたことだから自分の中でもうパターンが出来ていて意外にスラスラと語れるのだ。

で、1ヶ月弱のべ30時間の英会話プライベートレッスンは終了。
「英語のシャワーを浴びて耳を鍛える」「自分の意見を説得力のある形で相手に伝える」「特定のテーマについてディスカッションする」という当初の目的はまあまあ達成できたのではないか。
もちろんまだペラペラというわけにはいかないけれど、後は実践あるのみ。
来週から始まる授業に先学期よりは積極的に参加できそうな気はしている。
毎回興味深いテーマを投げかけてくれたJohn先生に感謝。

夜、「Macの調子が悪いので見て下さい」という電話を受けてノコノコKanaちゃんの家に行くと、Surprise!
何と、僕の誕生日を祝うためにみんなが集まっていた。

全く予期していなかったので本当にビックリ。
「なんで誕生日知ってるの?」って聞いたら「ホームページのProfileのところに書いてありますよ」とのお答え。
なるほど、そりゃそうだなぁ。
それにしても、32才になってこんなパーティーを開いてもらえるとは。

さらには平均年齢が僕より10才も若い美女たち(!?)に囲まれてこんな写真を撮ったり…。

日本でお世話になった人たちが見たら「鈴木は何のために留学してるんだ!」って怒りそうだなぁ(苦笑)。
みんな、本当にありがとね。

それから、お祝いのメールをいただいたみなさん、どうもありがとうございます。
誕生日にメールをくれるのはPostPetの「チビぽん」だけかと思っていたので(それもさみしいなぁ(笑))、とても嬉しかったです。
男の真価は30才を過ぎてから(女も、ですね)。
頑張らなあかんな、とふんどしのヒモを締め直したのでありました。

1月31日(日)

午後2時起床。
日本から送ってもらったテレビ番組のビデオを見ながらダラダラ過ごす。

CD-ROM制作に向けて「アメリカ大学資料請求ダイレクトリンク」を作ろうとふと思い立ってMacに向かう。
American Universitiesあたりをベースにすれば意外に簡単に出来るかなと思ったのだが、とんでもない。
いったい、アメリカに大学はいくつあるんだ!?
とりあえず各大学のホームページ表紙にリンクを張ったリストを作るだけで精一杯。
日本からの留学生がほとんどいない大学はカットしようと思いつつ、それがどこなのか分からず結局カットなし。
1人で全部の資料請求ページをチェックしてたら何年かかってしまうんだろう(笑)。
まぁ、気を長く持ってボチボチいきましょう。

URLや担当者メールアドレスなどみなさんからの情報提供も大歓迎ですので、よろしくお願いします。

そんなこんなで僕の冬休みは終わり。
いよいよ今週から新学期だ。
頑張っていこう!

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