某大物アーティストのレコーディング&クリップ撮影のためL.A.に来ている音楽プロデューサーのNさんに会うため、篠原さんとビバリーセンター前のスターバックスへ。
かつて篠原さんの上司でもあったNさんは気さくで誠実な音楽のプロフェッショナル。
日本でも盛り上がりつつあるネットによる音楽配信の現状についてぜひいろいろ聞いてみたいと思ったのだ。
アメリカのミュージシャンや音楽関係者ともメールのやりとりをし、ウェブサイトを通じて自分が手がけるアーティストの情報を発信しているくらいだから、当然、インターネットを使った音楽配信にも積極的なのだろうと思ったのだが、意外にもそうではなかった。
「ソフトバンクの孫正義が会いに来たんだけど、ちょっと違うんだよねぇ」と手厳しい。
最大の理由は、音質の低下だという。
「いくら“CD並み”といったって、CDよりはクオリティーが劣るわけでしょ? オレたちは少しでもいい音を作ろうと頑張っているわけだから…」
音楽を愛し音楽にこだわればこだわるほど、そう考えるのは当然だろう。
それに、レコードやCDの“モノ”としての魅力。
僕は音楽についてはそうでもないが、本については同じような愛着を持っているからよく分かる。
たとえインターネットで全文を読めたとしても、装丁を含めたモノとしての「本」を自分で所有できる喜びは確かにある。
いくらレンタルが普及してもCDを買う人がいなくならないのは、この人間の所有欲と関連しているのかもしれない。
ただ、現在も進化を続けるテクノロジーはやがてこうした障害を克服するはずだ。
CDを超える音質のデータ圧縮技術が開発され、家庭用プリンタで印刷物に見劣りしないジャケットが作れる日が来るだろう。
「そうなったらその時考えるよ」とNさんはこともなげに言う。
「レコードからCDに移行したときだって慌てて一番乗りする必要はなかったしね」
う〜ん、これは面白い。
今、e-Commerceの分野では壮絶なシェア争いが行われている。
まだ一度も利益を出したことのないAmazon.comが高い評価を得ているのは、まずシェアを押さえることが重要で、そうすれば将来、莫大な利益を生むと信じられているからだ。
しかし、エンタテイメントの世界ではこの法則は通用しないかもしれない。
たとえ巨大企業が市場を制圧していたとしても、無名アーティストが大ヒットを生むチャンスが常に残されているのだ。
事実、Nさんは後発の独立系音楽会社でありながらチャートをにぎわすミリオンセラーを次々に世に送り出してきた。
この辺については改めてじっくり考えてみたいと思う。
いずれにしても大切なのは魅力的なコンテンツを作ること。
エンタテイメントの基本を再認識させられた夜だった。
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