「アメリカ例外論」(シーモア・M・リブセット著/上坂昇・金重紘訳/明石書店)やっと読了。
なかなか面白かった。
著者はハーバード、スタンフォードなどの教授を経て、現在はジョージ・メイソン大学の教授。
アメリカの政治学会、社会学会の会長をも務めた世界的に有名な学者だという。
そんなバリバリのアメリカ人インテリが「アメリカ的価値観は普遍的なものではなく、むしろ例外的なものだ」というのだから面白い。
たとえばこんな選択肢がある。
(a)「ほとんどの人が同じ人物で合意するまで皆が集まって話し合った方がいい」
(b)「皆が集まって名前を挙げ、投票し、そして投票の過半数を獲得した人物を送り出す方がいい。たとえ依然としてこの人物に反対の人が幾人かいてもいい」
(a)の「議論を詰める」と答えた人は…
アメリカ 37.7%
イギリス 58.7%
ドイツ 69.0%
フランス 61.9%
日本 84.6%
これは分かり易すぎるけれど、著者の主張を最もよく示した例だ。
つまり、アメリカは「例外」で日本は「特殊」。
本質的に非常に異なる価値体系を持つ日本とアメリカが文化的な異端者としてうまくやってきた、ということになる。
アメリカ的信条(クリード)は五つの言葉で説明できる。自由、平等主義、個人主義、ポピュリズム(人民主義)、レッセフェール(自由放任主義)である。平等主義のアメリカ的意味は、(中略)機会と尊敬の平等であって、結果や条件の平等ではない。封建制、君主制、貴族社会がなかったことが、こうした価値観に影響している。
「アメリカは一つの信条に基づいて建国された世界で唯一の国である。この信条は独立宣言の中に、独断的でしかも神学的とさえいえる明快さで説明されている」
アメリカ以外の他の国々の場合、自国についての認識は共通の歴史から生まれている。(中略)しかし、アメリカ人であることはイデオロギー上の誓約である。それは出生の問題ではない。
う〜ん、よく分かるような気がする。
アメリカという国は何にもなかった新大陸に(ホントはネイティブアメリカンがいたんだけど)様々なバックグラウンドを持つ移民が集まって作った新しい国だ。
みんながバラバラのことを考えてたんじゃ国としてうまくいかないから、「アメリカっていう国はこういう方向でいくよ」というルールを決めて、みんなでそれを実現しようと努力している、いわば実験的な国。
確かに、そんな国は他にないもんなぁ。
様々な価値観の類似性で比較すると、「アメリカ−カナダ−西欧−日本」という順番(別にどちらが優れているというのではなく)が浮かび上がってくる。
中国などアジア諸国は日本と共通する点が多く、この価値観軸とはまた別のところにイスラム圏があるのだろう。
この本の第7章「アメリカ例外論と日本の特殊性」を読んでいると、日本はこの原書が書かれた1996年からさらにアメリカ的価値観の方向に変化してきているように感じる。
グローバルスタンダードという名のアメリカ化。
それを受け入れるにしても、その価値観が「例外」なのかもしれないという想像力は持っていたいなと考えたのだった。
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